オオウバユリ  Cardiocrinum  glehnii  Makino

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   日本には2種類のウバユリがある。

   北海道と本州中部地方以北にオオウバユリが

   関東地方以西と四国、九州にウバユリが分布する。

   両種の違いは、葉の形、草丈、花数の多少によって区別されている。

   分布が重なる関東地方から中部地方においては

   主に太平洋側にウバユリが、

   日本海側にオオウバユリが分布する傾向が強い。




   
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   オオウバユリはその名のごとく壮大な植物である。

   草丈は1メートルから2メートルほどになる。

   1本の花茎に5~20個ほどの花をつけるのが普通だが

   充実した株になると30個以上の花を咲かせるものもある。

   私は北海道の利尻山麓で、花を32個も咲かせたオオウバユリを見たことがある。

   葉は広卵形で基部は心形になる。

   葉が大きく丸っこい、と覚えても良い。

   これに対し、ウバユリは大きくても1メートル程度

   花の数は2~5個と少なく、葉の形は楕円状となるので

   葉の先端がややとがり気味となる。




   
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   オオウバユリもウバユリも、極めて特異なのは

   花が咲くのは一生にたった1度だけ。

   多くの植物は1年草でも多年草でも、花は毎年のように咲くが

   オオウバユリやウバユリは、花を咲かせて実を結ぶと

   それで命が終わりなのである。

   花を咲かせた株は、すべて枯れてしまう。




   
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   オオウバユリはユリ科ウバユリ属である。

   花はテッポウユリに似ているが、テッポウユリやヤマユリなどが属すユリ属ではない。

   だから根っ子に百合のような球根がない。

   ユリ科だが、ウバユリ属は根に球根がないのである。

   種子から芽生えたオオウバユリは、6年から8年の歳月をかけて少しずつ大きくなり

   葉を数枚つけるようになる。ある年、輪生状の葉をつけると、この株は見る見るうちに花茎を伸ばし

   一生にたった1度の花を咲かせるのである。




   
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   つぼみは最初、緑色の苞に包まれて、上を向いて伸びだしてくる。

   それがやがて真横を向き、花が開く

   花の長さは12~18センチ。

   横から見るとやや隙間があるゆがんだ形をしている。




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   花の内部を見るために花びらを外してみた。

   オシベが6本、メシベが1本、典型的なユリ科の特徴である。

   花びらは元に向かって濃いエンジ色をしている。

   ユリ科だから花びらは6枚ある。

   やや幅の広い内花被片が3枚、幅の狭い外花被片が3枚である。

   正面から花を見ると、その構造が良くわかる。




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   花に思い切り顔を近づけて、またまたつぶやいてしまった。

   「う~ん、やっぱりあんたは最高」

   オオウバユリは私の大好きな花のひとつである。

   どちらかというと大柄で、雑な感じのする花だが

   その香りたるや、えも言われぬ芳香なのである。

   数ある花の中で、これほど上品な香りは、そうざらにあるものではない。

   好きな理由の第一は、1にも2にも、この香りにある。




   
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   花の香りは四六時中匂っているわけではない。

   特に強く香る時間帯がある。

   それが朝だったり、夕方だったりする。

   花の受粉はマルハナバチの類によるが

   虫たちを呼び寄せるための香りでもないような気がする。

   花が開く開花時間と関係があるかも知れない。

   咲いた花の命は5日間ほどで、またたく間に茶色く萎れてゆく。




   
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   一生にたった1度の花なのに

   花の命は驚くほど短い。

   だが、風に託す種子の数は多く、1個あたりの果実には

   平均で410個ほどの種子がぎっしりと詰っている。

   種子によっても増えるが、オオウバユリは花を咲かせた株の根元には

   栄養繁殖によってできた小さな芽、ラメットと呼ぶ娘鱗茎(むすめりんけい)が2~3個できていて

   次世代として成長する準備を整えているのである。




   
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   ウバユリ属には球根がない、と書いたが

   より正確に表現すると、球根状のユリ根もどきがある。

   花が咲くオオウバユリには、ヒゲ根状の根っ子があるだけだが

   成長段階のオオウバユリには、葉とつながっている球根状の鱗茎が数枚ある。

   芽生えてから5~6年を経たものには、小さな球根と呼べる程度の鱗茎がある。

   オオウバユリの自生が多い北海道では、その昔、

   アイヌ民族は、これらを食料として利用していた、という記録がある。




   
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   ウバユリ属は世界的な分布を見ても数が少なく

   隣りの中国・四川省周辺に日本のものとよく似ているものが1種と

   ヒマラヤから中国にかけて、より巨大に3メートルほどになるヒマラヤウバユリがあるだけで

   あとは日本のオオウバユリと同じものが、サハリンや南千島に分布する。

   ウバユリを世界に向けて最初に発表したのは牧野富太郎で

   牧野は名著、新日本植物図鑑のオオウバユリのページで

   ウバユリとともに古くからユリ属に入れられていたが、葉が網状脈を持つこと、

   花がおしつぶされたような左右相称の傾向を持つこと、葯がユリのような明瞭な丁字状にならないこと、

   鱗茎の鱗片にはその先端に葉身のあることなどで、はっきりと別属であることに著者はこれに気づき、

   この属を設立した、しかし永らく欧米の学者はそれを認識するにいたらなかったが、近年ヒマラヤ産の壮大な

   一種 C,giganteum が欧米に栽培が実現されるにいたって、ようやくその真意が理解された。と

   どんなもんだい、と言わんばかりに意気揚々と筆を走らせている。

   日本の学者が学名を付けたり、世界に向けて日本の植物を発表し始めた最初の頃の話しである。

   今回タイトルの学名に、この種は誰が発表したのかという著者名 Makino まで入れたのは

   このためである。普通、学名の表記では著者名は省略されることが多い。




   
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   ともあれ今回は、大好きなオオウバユリをたくさん見られてご機嫌だった。

   何故か植物図鑑には、花の香りのことがほとんど書かれていない。

   いつかオオウバユリの香りについて、思い切り書いてみたい、と、花を撮影するたびに思っていた。

   大好きなオオウバユリは毎年のように写している。

   昨年の夏も見事なオオウバユリに出会った。

   ブログを作ろうとたくさんの枚数を撮った。だが、時間がなくて結局ブログを書くことができなかった。

   今回も山ではもうオオウバユリは果実になりかけている時季だが、今書いておかないと

   またまた時季を逸してしまいそうなので

   季節外れになってしまったが、あえて書いてみた。

   最後にウバユリの語源だが、花の咲く頃に葉が枯れているものが多いので

   歯の欠けた姥に例えて、姥ユリの名前が生まれた。











   撮影は2011年8月6日と10日 長野県菅平の別荘地内で。

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   撮影はすべてケイタイ電話で撮っています。 

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