植物似たもの同士7   セイヨウアブラナとセイヨウカラシナ

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   河川敷や川の土手などを黄色に染める菜の花です。

   かつては食料や油を取るために、大量に栽培されていた時代もありました。

   最近では新たに帰化したものや、畑で栽培されているアブラナ科の野菜などと複雑に交

   雑して、様々な集団があり、ちょっと手に負えない状態となっています。

   ここでは交雑種も含めて、大きく二つに分ける見方をお伝えします。

   
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   河川敷や川の土手をまっ黄色に染めて咲く菜の花は、春の風物詩でもありますが、この

   菜の花が実は1種類だけではないのです。

   そんなことを気にした方はありませんか。

   ソメイヨシノも各地で満開になって、いよいよ春本番です。

   桜並木と黄色い菜の花は色の取り合わせも良く、まさに春を演出する暖かな色です。

   桜の中でも、ソメイヨシノは誰もが知っている桜ですが、菜の花の名前となると、首を傾げ

   る人も多いことでしょう。

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   左がセイヨウアブラナ、右がセイヨウカラシナです。

   この花の画像、同じ日に同じ河川敷で撮影したのですよ。

   このように両方が一緒に混じって咲いていることも珍しくありません。

   ちょっと植物に詳しい方だと、花の大きさや咲き方を見るだけでも大体の見当はつくので

   すが、セイヨウアブラナは花が大きく、セイヨウカラシナはセイヨウアブラナより花がひとま

   わり小さいです。

   花の咲き方ですが、セイヨウアブラナは花がかたまって咲きますが、セイヨウカラシナは

   茎にパラパラと棒状に咲きます。こんな感じです。

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   左がセイヨウアブラナ、右がセイヨウカラシナです。

   雰囲気はつかんでいただけましたか。花期はセイヨウアブラナの方が若干早く咲きだし

   ます。セイヨウカラシナの方がやや遅く最盛期を迎えます。

   


   それでは次に両種を区別する最も大事な部分を見てみましょう。

   ここがいちばん大事なポイントですから、物忘れのひどい人はノートにメモしてくださいネ。

   花茎についている葉の付け根を見ます。

   茎の下部より中ほどから上の方が良いかも知れません。

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   左のセイヨウアブラナは葉の基部が耳形になり、茎を抱きますが、右のセイヨウカラシナ

   の葉の基部は茎を抱きません。

   葉の基部が茎を抱いていればセイヨウアブラナ。

   葉の基部が茎を抱いていなければセイヨウカラシナです。

   ここがいちばんの決め手となります。

   ついでですから、根元の大きな葉の縁も見てみましょう。

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   左のセイヨウアブラの葉の縁は波打つ程度ですが、右のセイヨウカラシナには鋭いギザ

   ギザ(鋸歯)があるのもよい目印となります。

   遠くから眺めていると、ただ黄色い菜の花ですが、近くに行ってよく見ると、こんな違いが

   あったのですよ。

   どちらもユーラシア大陸原産で、日本には野菜や菜種油を取るために導入された有用植

   物だったのですね。それが時代とともに忘れ去られ、今では河川敷などにしぶとく生き残

   っているわけです。どちらも野菜ですから、当然食べられます。

   春先の若葉や蕾のお浸しは美味しいですよ。キレイな場所のものは多いに利用しましょ

   う。私の味覚ではセイヨウアブラナの方がクセがなく美味しいですね。

   セイヨウカラシナは苦味があります。湯がいた後に水にしばらく晒すのがコツです。こちら

   は辛し醤油がお奨めかな。

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   サア、これですっきりしましたね。と言いたいところなのですが、自然界、それほど単純で

   はないのですね。

   実際に野外に出て調べてみると、とんでもない交雑が進行していて、もはや純粋なもの

   はないのではないか、というくらいにぐちゃぐちゃになってます。


   ここからは、ちょっと上級者向けになります。

   特に問題なのがセイヨウカラシナです。図鑑ほどスッキリしないのは、実に様々な交雑個

   体が存在するのです。

   極端な例ですが、下の画像をご覧ください。

   先ずまったく違う葉を並べてみます、どちらもセイヨウカラシナです。

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   人間が野菜として栽培している菜の花(実に多種類のアブラナ科の植物が栽培されてい

   ます)と簡単に交雑してしまうのです。上の画像2枚は、セイヨウカラシナが栽培の菜の花

   と交雑したものです。セイヨウカラシナは1年草ですから、種子によって繁殖します。

   交雑がまだ初期の段階では交雑の相手を類推することができます。

   左画像の片親を探してみました。

   すぐ近くの畑で栽培されている菜の花でした。

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   こちらがセイヨウカラシナの片親と判断される栽培の菜の花です。右画像の葉に注目して

   ください。羽状に切れ込んだ葉、河川敷で見た一風変わったセイヨウカラシナとそっくりで

   す。これらの菜の花は、毎年近くの畑で栽培が続けられています。

   河川敷で見つけたセイヨウカラシナの葉と並べてみます。

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   左が栽培されている菜の花の葉、右がセイヨウカラシナの葉です。

   これらの交雑をもたらすのは花を訪れるポリネーター達です。

   菜の花にはたくさんの蝶や蜂、アブなどの昆虫が、羽音も賑やかに訪れています。

   菜の花畑にモンシロチョウが舞う姿は、のどかな風景ではありますが、彼らが花粉媒介

   者として、交雑の重要な役割を担っているのです。

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   左は栽培の菜の花を訪れたモンシロチョウ。右はセイヨウカラシナの花を訪れたモンシロ

   チョウです。蝶たちは花を選びません。栽培の菜の花だろうが、野生の菜の花だろうが、

   近くに咲いている花を次から次へと訪ねます。

   蝶に限らず受粉の仲立ちをするポリネーターに、栽培と野生の区別なんてないのです。

   美味しい蜜や花粉を提供してくれる花ならば、花を選ばないのです。

   かくして、同じセイヨウカラシナでありながら、葉の形も枝ぶりも違う集団がいくつも出来て

   しまうのです。交雑が初期の段階ならば、まだ交雑相手を見つけることも可能です。

   ですが、長い年月の間に浸透してしまった交雑は、もはや人間の目では区別することが

   出来ず、遺伝子レベルでの解析が必要になってくるのです。

   最初にぐちゃぐちゃになっている、と書いたのはこういうことなのです。

   比較的典型的なセイヨウカラシナと、例に挙げたセイヨウカラシナの花を並べてみます。

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   どちらも同じセイヨウカラシナですが、交雑相手の血が強く出ると、葉の形や枝ぶりまでも

   が変わってきます。これはセイヨウカラシナの例ですが、セイヨウアブラナの方は、これほ

   どの変異はないようです。

   セイヨウアブラナとセイヨウカラシナの区別は、葉が茎を抱くか抱かないか、最終的には

   これにつきるようです。

   余談ですが、野生化しているセイヨウアブラナやセイヨウカラシナと比べると、栽培してい

   る菜の花は、全般的に花が大きく、花びらの丸みが強い傾向があります。

   最後は栽培菜の花の代表アブラナの花のアップです。

   
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   長い間お付き合いいただきありがとうございました。多少はお役に立てたでしょうか。



   (撮影は愛知県半田市で2008.3.22 3.24 3.30 4.1 阿久比川周辺で)

   

   

   

   

   



   

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