ヤクシマノギク

画像









   ヤクシマノギクの撮影に屋久島を訪れるのは、これで4回目である。

   最初に来た時は花には早く、まだみんなつぼみだった。

   2回目に来た時は季節が遅すぎて、咲き終わっていた。

   3回目は最初に来た時よりも遅く来たのに、まだ咲いていなかった。

   ヤクシマノギクは日本の野菊の中では、花期が最も遅い種類である。

   花が最盛期になるのは11月である。

   今年の10月に来た時に思いのほか良い場所に生えているのを見つけた。

   だが10月も下旬だと言うのに、つぼみはかっちりと固かった。

   これが咲けば絶対に絵になる、そう感じて開花時期を予測する。

   そのつぼみの状態から、11月の10日過ぎには咲くだろうと、およそ2週間後と予測したのである。

   費用も馬鹿にならない屋久島に立て続けに行こうと思ったのは、ヤクシマノギクの花を撮影したかったからであ

   る。何故これほどまでにこだわったかと言うと、ヤクシマノギクは極めて個体数が少ないのである。




   画像画像























   山と渓谷社発行の「日本の野菊」の中で、著者いがりまさし氏も言っているように、日本の野菊の中では

   最も個体数が少ない種類であることは間違いないだろう。

   彼にして見たのはわずか5~6個体と書いているが、これほど少なくはないが、人目に触れるような場所には

   先ず生えていないのである。

   屋久島在住の人でも見たことがある人は少ないと思う。

   それほど自生している場所が極限されている。

   日本の野菊の中では、最も見ることが難しい種類でもあるのだ。

   当然のことながら環境省の絶滅危惧植物の中では、最も絶滅が懸念されるCRにランクされている。

   私が今年中にもう一度屋久島に行く決心をしたのも、たくさんつぼみが付いた株を見つけていたからである。




   
画像









   ヤクシマノギクは日当たりの良い岩場に生える。

   沢沿いのような水辺に近い岩場である。

   照葉樹林の林縁のような場所にも見られるが、そういった場所では花つきが悪く、ひょろひょろと伸びて

   ヤクシマノギク特有のガッシリとした花茎にはならない。

   林縁部のものは日当たりが悪くなると衰退の傾向をたどる。

   一般に野菊の類は個体数も多く、地域限定の種類でもその場所に出向けば、一面に咲いていることが多い。

   そんな中にあって、ヤクシマノギクは極めて異端で、爆発的に増えるようなことはない。

   ヤクシマノギクの画像を送った花友達から、ノコンギクとどこが違うのですか、という素朴な質問が来た。

   パッと見には確かにノコンギクに似ているが、実物を見たことがある人なら、ひと目で違いがわかる。




   画像画像

























   左画像のように葉の質は厚くて光沢があり、はっきりと目立つ鋸歯があり、花茎が太い。これが何よりの特徴

   だが、葉の光沢は右画像の方がわかりやすいだろうか。

   野菊の類の識別には総苞と呼ぶ、花の首の部分も大事である。

   ヤクシマノギクは総苞片が3~4列に鱗状に重なる(下の左画像)

   花の色は淡い紫色だが、個体により濃淡がある。




   画像画像
























   ともあれ、1種類の花の撮影ために4回も屋久島に通ったのははじめてである。

   それだけに今年撮影できた植物の中では、嬉しいもののベスト3には入るだろう。

   屋久島は雨も多いので、予備日も含め11月11日から14日まで4日間を用意した。

   今回は何が何でも撮影してやる、という意気込みだったのである。

   撮影は初日の11日、ドキドキしながら目的地に到着すると紫色の花群が目に飛び込んできた。

   まさに申し分のない咲き具合で。

   こんなにピッタリと花期が予測できるとは、自分でも信じられないほどだった。

   気をよくして銀塩、デジカメ、ケイタイの順で思う存分に撮影した。

   念のためにフィルムも2種類を使い分けながら。

   仕上がり、もちろんバッチリですよ。何しろプロですから。

   嬉しいことにこの日、天も我に味方したのです。

   空港に着陸する頃から雨の予報を裏切って青空が見え始め、目的地に到着する頃にはすっかり雨もあがり

   オマケに風もない好条件、2時間ほどじっくりと撮影しました。

   ヤレヤレこれでやっと念願が叶ったぞ、と撮影を終えて感慨にふけっていると、何故かスコールのような雨

   まるで私の撮影が終わるのを待っていたかのような雨でした。

   雨、雨、降れ、降れ、もぉっと降れ ♪ ♪いつしか、こんな歌を口ずさんでおりました。




   画像画像


























   撮影は2009年11月11日 鹿児島県の屋久島で

   画像はクリックすると大きくなります。大きな画面でも楽しんでくださいね。

   晴れ男をまたまた実感した1日でありました。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

宮本
2009年12月06日 00:29
 みかんさん、こんばんは。いいですねえ、ヤクシマノギク。ちょうど満開のヤクシマノギクが目に入ったときのみかんさんの喜ぶようすがヒシヒシと伝わってきます。「レッドデータブック」の写真のときはまだ蕾だっただけに、今回はまさに名誉挽回ですね。

 「日本の野菊」で初めてヤクシマノギクの写真を見て以来、いつか見に行きたいと思っているのですが、屋久島はどうしてもまとまった日数がいるので、なかなか出かけるチャンスがなく、いまだフロンティアの遠き島です。11月中旬だと、トカラノギクにはまだ早いのでしょうか。
上州花狂い
2009年12月06日 08:22
ヤクシマノギクの撮影、おめでとうございます。
>ドキドキしながら目的地に到着すると紫色の花群が目に飛び込んできた。
何度も経験があるだけにドキドキする気持ちはよく理解できます。
苦労してCRクラスに出合った時の喜びは格別ですね。
南の島への遠征は当分ムリかも知れません。
南の島と言えば鳥取のYさんが、10日から調査にでかけます。
azami*
2009年12月06日 08:49
続いての屋久島行きには、こんな魅力的なワケがおありだったのですね♪
植物にかける熱意や全てのものが結集された成果は素晴らしいです。
それに”何しろプロですから”って、嬉しそうな様子が想像できて思わず微笑が零れました(^^
とは云っても、お顔を知っているわけではないので、イメージだけふくらんでいます。
貴重なお写真を拝見できて嬉しいです。ありがとうございます!!
みかん
2009年12月06日 14:46
宮本さん こんにちは。
「レッドデータプランツ」に載せている写真は林縁部のなんともお粗末な写真で、ずっと気になっていました。あの本が発売になるギリギリに撮影に行ったのですが、花は咲いていませんでした。裏話しを紹介すると、花の写真が撮れるつもりで、実は原稿を先に書いていたのです。内容は3度目の正直でやっと花の撮影に成功しました。という内容だったのですが、撮影できなかったために慌てて原稿を書き直ししたのでした。あの株は今年も健在でしたが、日陰になりすぎて蕾がついていませんでした。

11月中旬であればトカラノギクも撮影可能と思います。私は屋久島のものはオオシマノジギクと認識していて、トカラノギクと言われてもぴんときません。ヤクシマノギクほど少なくはありませんが、トカラノギクも割りと限られた場所にしか咲いていません。でも、こちらは島内を一周すれば、どこかの道端でお目にかかれるでしょう。
みかん
2009年12月06日 14:53
上州花狂いさん こんにちは。
最近はシダの撮影のために屋久島に行くことが多いのですが、今回のいちばんの目的はヤクシマノギクでした。10月に株は確認していたので、心配していたのは咲き具合だけでした。思わずニコッとしてしまったほど申し分のない開花状況でした。やはりこんな状態にめぐり合うと「ヤッター」と叫びたくなりますね。
みかん
2009年12月06日 15:00
azami*さん お久し振りです。
立て続けに南の島に出かけることは少ないのですが、今回は出かけて良かったと思っています。気になっていたシダの再撮影も出来ましたし、歩けば歩いただけの収穫はあります。
現像のあがったフィルムをルーペで確認しながら、改めて出かけて良かったと感じています。ただ今回はひとりだったので、足となる車がないのが辛い所でした。免許を持っていないと不便なこともあります。
アライグマ
2009年12月06日 16:08
執念ですね。((((((((^^;
矢張りプロは我慢か。
ヽ(´ー`)ノ お疲れ様でした。
みかんさんが良い写真を撮ると学術的にも貴重なデータが増えたって事ですから。
\^∇^/
みかん
2009年12月06日 23:12
アライグマさん 今晩は。
ありがとうございます。確かに執念以外の何ものでもないですね。特にレッドに関してはきちんとした記録を残すことが、私に与えられた天命みたいなものだと考えています。
日本にひとりくらいこんな変なのがいないと、文字原稿だけの幻の植物ばかりになってしまうような気がしています。これも写真家としての自負かも知れません。要するに植物が大好きで、自分の眼で見てみたいだけなんですけどね。
fu-co
2009年12月08日 00:27
みかんさん、こんばんは!
「ヤクシマノギク」の撮影のために遠い屋久島まで4回も訪問されるとは、恐れいりました!!
正直いって、私もノコンギクとの違いがいまひとつ理解できずにいましたので、お友達の一言に妙に納得(?)いたしました(笑)
でも、読み進めていくうちに“なるほど”と。。。
私も数年前に屋久島に行ったもの丁度この時期、ヤクシマノギクの存在を知っていれば根気良く探したに違いありません。
もっとも、一回の訪問であれもこれも欲張っても叶うはずはないのですが、知らなかったことが悔やまれます。
今、「レッドデータプランツ」と「日本の野菊」を取り出して見ているところです(^^ゞ
みかん
2009年12月08日 14:10
fu-coさん こんにちは。
我々プロは目的を持って行動しますが、目的はひとつの植物でも、必ずそれ以外のプラスαが付いて廻りますので、結構楽しい時間でもあるのですよ。屋久島は平地から山の上まで、何度も訪ねていますが、目的が違うと目線も変わってきます。草を撮る場合は主に下を向いて歩きますが、木の花を撮る場合は、上ばかり気にして歩きます。
ヤクシマノギクは、今度の本では素晴らしい画像をお目にかけることができると思います。
さなえ(花の庵)
2009年12月08日 19:25
みかんさん、こんばんは。

このところ忙しい日々をすごしていましたので、拝見していながらコメントが遅くなりました。

執念のヤクシマノギクの撮影、満足のいくように撮影されたとか、読んでいるこちらにまで、どきどき感とそして撮られている間の充実感がひしひしと伝わってきます。

手に取るようにわかる心情です。
プロでは有りませんが(爆笑)見たいと思っていた花の開花時期を読んで、その場所に行き、巡り合った時の嬉しさは格別ですね。

おめでとうございます。
もう野菊の種もこちらの地方では、ほとんど見られなくなりました。
みかんさんのページで見ることが出来嬉しい限りです。

たくましいイメージながら美しい花です。
みかん
2009年12月08日 22:27
さなえさん 今晩は。
師走の声を聞くと何となく慌しくなりますね。今日NHKのテレビをかけていたら、どうぞ良いお年を、なんてアナウンサーが言っていて、ちょっとビックリしました。気が早すぎますよね。年内にまだまだやることが沢山あります。
 
屋久島は今年は2回行きましたが、珍しくよく雨に降られました。普段、遠出をしても雨に降られることはほとんどないのですが、3日も続けて雨なんて、私にとっては珍しいことです。もう少し屋久島の植物を載せてみますね。
ブログ用に撮っていて、載せられなかった植物も沢山あるので、季節外れになってしまいますが、この冬、いくつか紹介しようと考えています。その前に記念のブログもリリースしなければ。
アザミの歌
2009年12月09日 19:30
みかんさん、こんばんは。
貴重なヤクシマノギクを見せていただき有難うございます。
プロの執念で開花の時期に出会われおめでとうございます。

何気なく見せていて頂いている図鑑などはこのような御苦労の中で撮られている貴重な映像が多く、私達は勉強したり楽しませていただいていることに感謝です。
みかん
2009年12月09日 22:29
アザミの歌さん 今晩は。
今回のヤクシマノギクの撮影はタイミングもよく、思うように撮れて大満足でした。何度かチャレンジしていただけに、嬉しい一日となりました。この頃は目的の植物1種類を求めて遠出をすることが多くなりました。いつもうまく行くとは限りませんが、それなりに楽しい旅となります。
2016年11月21日 20:49
また古いブログ失礼します。
先程、ヤクシマノギク見てきました。少し時季が過ぎてる気もしましたが、まだ充分綺麗でした。
私の推測で大変申し訳ないのですが、みかんさんの写真は、とある観光地の売店の裏の大きな石で撮られたものでないかと思いました。

大変恐縮ですが、その地点の個体は、度々ここで移動式ジューススタンドを営んでいる方が、植栽したものだと、売店の方から伺いました。野生植物を植栽するのは、非常に良くないことだとみかんさんが常々訴えてらっしゃるので、私も綺麗な写真が撮れたとはいえ、素直に喜んで良いのかと思った次第。