みかんの花日記

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zoom RSS この生き方は、凄絶すぎるーーーー樹の命

<<   作成日時 : 2018/02/13 20:02   >>

驚いた ブログ気持玉 19 / トラックバック 0 / コメント 6

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   凄まじい形相をしているが、枯れ木ではない。

   この樹は今も生きている。

   この地に芽生えて幾星霜、何百年か何千年か

   樹齢さえも定かではないこの樹は

   Cupressus sempervirens var. horezontalis (サイプレスス センペルビレンス ホリゾンタリス)である。

   日本で言えば屋久杉に匹敵するクラスの大木である。

   上の画像のような古木が、何本も生きている。

   森林限界ぎりぎりの境界線あたりである。


   
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   場所はエーゲ海に浮かぶ大きな島

   ギリシアのクレタ島である。

   島の中に空港が二つもある大きな島なので、2千メートルをゆうに越す雪山が連なる。

   アルパインゾーンもある大きな山塊は、レフカ・オリ(白山)山脈と呼ばれる。

   その山の中腹に生えているこの樹に会いたくて、またやって来た。

   雪のカフカ山塊に登るのは、これで3回目だろうか。


   
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   2枚目の画像の、左下を写したのが上の画像である。

   先端が生きていることは、これでハッキリとわかることだろう。

   まるで龍か大蛇がのたうち回るような凄まじい光景は

   見る者を圧倒する。

   日本人は古木や大木には神が宿るとして神聖視するが

   この樹の生きざまを見ていると、そんな考えが吹き飛んでしまいそうな

   凄絶さを感じる。


   
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   どの樹を見ても、畏怖の念だけが湧いてくる。

   いずれの画像も2段階に大きくなります。

   クリックしてその迫力を実感してください。

   ヒノキ科イトスギ属のCupressus sempervirens (サイプレスス センペルビレンス) は地中海沿岸から

   中東にかけて分布する。

   本種はイトスギの変種である。

   horizontalis (ホリゾンタリス) とは、水平の、という意味で、

   横に伸びる枝ぶりや葉が十字対生することに由来する。

   近年の新分類ではヒノキ科の多くの属がスギ科へと移行したが、イトスギ属はヒノキ科に残った。

   ヒノキは科を代表するように見えるが、ヒノキ科のメインとなるのはイトスギ属である。

   細くて真っすぐに伸びるイトスギは、ゴッホの絵などでも知られているが、本種を山で見る限りにおいては

   イトスギの仲間だとは到底思えない。

   その凄絶なまでの生態は、まるでビャクシンのようでもある。

   この樹の名前を調べていて、最初はビャクシン属をあたってみたのだが、イトスギ属だったことに驚いた。

   イトスギ属は世界に約20種ほどが知られている。アメリカなどにも多い。


   
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   レフカ山の麓は深い峡谷になっており、5月から10月頃の観光シーズンには、峡谷を歩く10数キロのトレッキ

   ングが有名だが、今の季節は峡谷へと降りてゆく観光コースも閉鎖され、観光客の姿はない。

   4月のはじめだとまだ残雪も多い。

   そんな季節にこの山に登るモノ好きはほとんどいないが、雪が残っている7合目か8合目あたりまでは

   どうしても行かなければならない。

   Cupressusに会うのが第一の目的なのだが、そのほかに雪が消えるとすぐに咲きだすクロッカスと

   チオノドクサの小さな花が見たいのである。


   
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   大きな石灰岩の岩が崩れてゴロゴロしている登山道は、歩きにくいのだが、それでもしっかりとしたトレイル

   がついている。森林限界を過ぎると、もう咲いている花はほとんどない。

   ただひたすら山の頂を目指す。

   山肌を刻んだ深い沢沿いに、残雪がたっぷりとある場所まで登ってきて

   登山道を外れてその沢に近づくと 「あった、あった。キレイに咲いてるじゃん」 と

   誰も人がいないのを良いことに、独り言を発する。


   
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   最初に目に入ったのがこのクロッカス、雪が解けたばかりの岩の割れ目で、パッチリと咲いていた。

   Crocus sieberi ssp. sieberi (クロクス シーベリー) である。

   クレタ島には11種類のクロッカスがあるが、このクロッカスは最も標高の高い場所にまで適応している。

   だからオマロス高原のような標高の低い場所では3月に咲くが、雪解けを追うように咲き登るので、

   標高の高い雪解け跡には、5月でも咲いている。

   天気が良くないと開かないが、花びらの外側に紫色のかすれ模様が出るのが特徴である。


   
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   この可愛いChionodoxa(チオノドクサ)は高山植物である。

   高さは5〜10センチ、アルパインゾーンに生える。

   クレタ島の植物図鑑 Wild flowers of Crete によれば、写真こそ載ってはいないものの

   標高1700〜2300メートルの間に生え、花期は5〜6月とある。

   私が登ったのは4月の中旬すぎだったが、前に来た時にこの季節でも咲くことを知っていたので

   わざわざ登ってきたのである。

   ご覧の通りの何とも可愛い花である。

   学名はChionodoxa nana (チオノドクサ ナナ) なので、私は親しみを込めてナナちゃんと呼んでいる。

   クレタ島だけで見られる固有種である。


   
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   植物の生える環境をhabitat と言うがクロッカスが生えるのも、チオノドクサが生えるのもStony sites や

   amongst bushes である。

   まさにそんな場所に両方が咲いていた。

   この時季、他に咲くものはないので、ブッシュの中で両方の花だけが目立っていた。

   この画像で、ナナちゃんがいかに小さな花であるかがわかるだろう。

   残雪と一緒に撮影したり、思う存分一人の時間を満喫した私は、そろそろ帰ろうかと

   登って来た登山道に戻る。


   
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   帰りの道すがらも、どうしても Cupressus に目が行ってしまう。

   ギリシア神話では、アポロンの寵愛を受けた少年が、友達であった牛を誤って殺してしまい、

   イトスギになって嘆き続けていると伝えているが、この凄まじいばかりの樹形を眺めていると

   その嘆きが、いかばかりであったのかが解るような気がする。


   
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   長い年月を風雪にさらされ、表面の樹皮は削り取られ、白くむきだしになったままの木の肌が

   なんとも痛々しい。

   一体どの部分がこの樹の根元なのか、まるでわからないような樹形である。

   本来なら直立して、上へ上へと伸びたいのだろうが、あまりにも強い風や厳しい高山の環境が

   上に伸びあがることを許さなかったのである。

   アテネと並んで、クレタ島は古代文明発祥の地である。

   Cupressusの白骨化した樹肌をジッと凝視しながら、神々と共にこの地に住んだ

   古代ギリシア人の悠久の時を想う。




   登山口まで戻って、ガイドや仲間たちと落ち合う。

   みなそれぞれが思い思いの1日を過ごしたせいか、心なしか皆の顔が晴れやかに見えた。

   昨日、チューリップの原種 Tulipa bakeri (トゥリパ・バケリ)が大群落となって咲きつづく丘で

   アネモネの赤や紫色の花々も一緒に見て、すでにみんなが大満足をしていたので、

   きょうはオマケのような1日だったのである。

   最後に、春のクレタ島のとっておきの風景をお目にかけよう。

   昨日撮影したチューリップの原種、Tulipa bakeri が咲きつづく、さながらチューリップの丘

   この年はとりわけ見事な群生だった。


   
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   撮影は2012年4月8日〜15日 ギリシアのクレタ島で。

   一部に2011年4月5日〜12日に撮影したものが含まれています。

   いずれもデジカメの大きなデータで撮影しています。画像は2段階に大きくなります。

   是非大きな画面で臨場感をお楽しみください。

   画像の無断使用を厳禁します。


   オマケ画像


   
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   地元のクレタ島では人気のあるDJである。

   この時は彼がドライバーとして1週間ほど付き合ってくれた。

   私の旅は、有名な観光地を訪ねるのではなく、好んで山間の山道に入り、気になる植物があると

   そこで停めて、などと頻繁に言う。気が済むまで撮影するからドライバーやガイドを2時間でも3時間でも

   待たせる。最初の1日2日は相当戸惑っていたようだが、3日もするとすっかり慣れて、こちらの意図すること

   が良くわかってくれたようである。当然のことながら彼が話すのはギリシア語、この時は参加者にフランス人

   もいて、仲間の共通語は英語。日本語とギリシア語とフランス語と英語が車内ではごちゃごちゃで、それで

   も意思の疎通はしっかりできるのが不思議。もちろん予定のない行動が日常茶飯事なので、オリーブ農家

   に寄って、搾りたてのバージンオイルを分けてもらったり、美味しそうなオレンジ畑でオレンジ狩りをさせても

   らったりのハプニングだらけなのだが、それがともかく最高に楽しい。

   わずか1週間ほどの旅でも、寝食を共に過ごすと不思議な友情感覚が芽生える。

   クレタ島からアテネへと飛び立つ島の空港で、大柄な彼がいつになくショボンとしている。

   「ありがとね。とても楽しかったよ」と日本語で言い、彼の肩をポンポンと軽くたたく。

   彼は涙ぐんで言葉を発しない。大粒の涙が今にもこぼれそうである。

   オイオイ、大の男が泣くなよ、と心の中で思いながらも、こちらも思わずほろりとさせられた。

   ギリシア人の純真さが強く印象に残った旅だった。

   


   


   

      

   
   

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
ものすごく好きです。枯れていない,枯れたような樹木。
日本国内でも,こういった個体をたまに見ますが,もう,壊れそうな感じのものが多いような気がします。

盆栽では,ジンとか,シャリとかいう芸風になるのですが,やはり自然の中の,自然に作られた姿がいいと思います。

クレタ島の素敵なDJさん,輝いていますね。いいなぁ。
はるこ
2018/02/16 23:28
はるこさん こんにちは。
盆栽用語のジンやシャリという言葉をはじめて知りました。真柏類には確かにこのような状態のものが良く見られますが、それが人工的に作られる、ということにも驚きました。

クレタのこの樹々のことは、初めて縄文杉を見た時以上に衝撃的なものでした。この年はブログにするつもりで丹念に撮影したのですが、なかなか書く機会がないままに今日まで来てしまいました。
これらの樹が、特に保護されるでもなく、普通に登山道の傍らで生き続けていることへの驚きもあり、日本とは何かが違うと、いつも感じています。

DJの彼は普段はサングラスをかけているので、見た目は非常に厳ついのですが、昼の休憩時にサングラスを外させ「俺がブロマイド用の画像を撮ってやるよ」と、いたずら半分で撮影したものです。よく見ると目の縁にサングラスの跡が残っていますね。
みかん
2018/02/17 11:43
こんばんは おひさしぶりです!!
クレタ島のこの巨木には驚きました。
私は、室戸のあこうやスダジイの根っ子を見ても、すごいと思ってました。
なんと強靭なんだろうと感心してました。
でもスケールが違いますね!!
この巨木にまつわるギリシャ神話には、度肝を抜かれました^^(喜)
アポロンの少年のように、深い悲しみがカタチなって刻まれ残るのなら、
たとえイノチは失っても構わないと、私も思う時がよくあります。
本当に心臓が破れて死んでは困るし、あり得ないでしょうけど、
そういうキモチをカタチにしてるギリシャ神話が好きなんです(笑)
愛おしく思います。
誰も行かない残雪の沢に密やかに咲いてるクロッカスのかわゆいこと~♪
さらに小さなナナちゃんに魅せられます!!
チューリップの群生は、しばしば夢に見るほど好きになり、
当時は使えるお金をかき集めてもツアーに参加したいなどと思ったのも、
今は愉しい夢だったんですよね(笑)
クレタ島の人気DJさんの横顔、さすがみかんさんベストショット!!
公開してファンを増やしてもらいたいですね~(喜)
彼とのようないい出会いのある旅を、私もしてみたいものです。
ときめくチューリップツアーに、オマケの貴重な1日があったこと、
お伺いできてうれしく思いました!!
ありがとうございまーす<(_ _)>🎶
ちなみに、本日、フクジュソウは、無事に撮ることが出来た由です〜(笑)
リサ・ママ
2018/02/18 21:18
リサ・ママさん こんにちは。
クレタには何度も出かけていますが、やはり春先がいいですね。
年によっては春の花が遅れていることもありますが、4月に入れば多くの花が咲きだすので、この季節に行くことが多いです。
ギリシアのペロポネソス半島なら絶対に秋がお薦めですが。ギリシアという国は、どこに行っても遺跡だらけですが、その遺跡の中にも野生のシクラメンが群生していたり、ステルンベルギアが咲いていたり、秋咲きのスイセンが咲いていたりします。石灰岩の山が多いので、植物は特に豊富のような気がします。
かつては日本に戻って、またすぐに海外というハードスケジュールをこなしていて、なかなかきちんと整理ができないままでした。これからはそれらのデータを整理しながら、少しずつでも日本では見られない花のことなども書いていこうかと考えています。
どこの国に出掛けても、それぞれに楽しい思い出ばかりなのですが、ギリシアやイタリア、オーストラリア、カナダなどは、回数も半端なく出かけているのですが、ブログネタは山ほどあるのです。新聞や雑誌に色々と書いたりはしているのですが、ポジフィルムでの撮影がほとんどなので、なかなか画像をたくさんお目にかけるチャンスがないのは残念です。

ご主人はシコクフクジュソウの撮影がうまくいったようで何よりです。また見せてもらえると嬉しいですね。
みかん
2018/02/19 12:05
ホンマ、「凄絶」という言葉がピッタシ!
ボクが、普段歩いている低山でも、台風などの影響で悲惨な姿になりながらも必死に生きている木を見ると、頑張れ!と声をかけてしまいます。
翌年も、それからも、同じ姿で生き続けているのを見るとジーンときてしまいます。
でも、ここのは、そんな生優しい事ではなく、生まれた時から厳しい環境で生きる事を強いられ、もがき、苦しみながらも必死で生きている。
正に「凄絶な生き様」です。
後述のギリシア神話…
自然の環境だけでなく、この神話は真実と思ってしまいそうです。

この木が本当に生きているのか?と思ってしまいます。
その答えの画像を見ると、より驚かされます。
植物って、ホンマ、不思議さんです。(^^ゞ

クロッカス、チオノドグサの花も、こんな地で元気に咲いていて…
それに、メッチャ、可愛いい。(^^)
普通、実際に見る事が出来ない自然に咲いている姿を、このように見させて頂けるのは、もう、感謝しかありませんね。

チューリップの原種といわれる花を鉢植えで育てた事があります。
オーソドックスなチューリップよりも、可愛いかったです。
ここは、正に、そのチューリップの丘。
大きくして見ると、もう、素晴らしい光景です。(^^)

オマケ画像以下を読むと、みかんさんはスゴイ方やなぁ…と思ってしまいます。
それに波長を合わせてくださった、この方もスゴイ。
大変な事もあるけど楽しい事もある素適な旅…
わずか一週間、されど一週間ですね。
yoppy702
2018/02/26 15:04
yoppy702さん おはようございます。
人は自然の中ではとても素直になれるような気がします。
特に誰も周りにい人がいないと、なおさら。
わずか一週間、されど一週間、まさにその通りですね。
未知の花に出会うことは、もちろん素敵なのですが、それ以上に出会った人の印象は強く残ります。たまたま宿を取った田舎町のカフェで、名前も知らないけれど、わずかでも触れ合った地元の人、他国から来ている観光客。道を尋ねた地元の人や子供たち。それらが見た花々と重なって、とても良い印象として心に刻まれます。
旅先で書いた日記を読み返すと、それらの印象が蘇ってきます。
最近はあまりしていないのですが、他国から自分宛ての絵ハガキを意識してたくさん出したことがありました。辺鄙な国からだと、自分が帰国した一週間後くらいに届いたりもしました。お土産をあまり買わないみかんは、それらのハガキが何よりのお土産と思っています。
年齢を重ねても歳相応の旅はできると思うので、これからは無理のない、そんな旅がしてみたいですね。
みかん
2018/02/27 09:35

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