みかんの花日記

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zoom RSS オオチダケサシ

<<   作成日時 : 2010/07/17 23:02   >>

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   中国の四川省は、花を見に毎年のように訪れている場所である。

   四川大地震の影響でしばらく入山が困難だったが、地震の爪跡も生々しい昨年(2009年)

   数年振りに訪れた。

   今回の花旅では、どうしても撮影したい花があった。

   オオチダケサシである。

   オオチダケサシは日本にもある。

   長崎県の対馬のごく限られた場所に細々と生きている。

   2005年7月31日に撮影しているが、個体数は少なく、チダケサシより草丈が低く

   どこが大(オオ)なのか、と思うほどであった。

   日本のものは大きくても60センチほどにしかならないが、本場の中国では、高さが1メートル以上にもなる。




   
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   上の画像で、先ずお断りをしておくが、花の下に見える対生したように見える白っぽい葉や、3出葉の葉は

   別のマメ科の植物で、オオチダケサシの葉ではない。

   オオチダケサシは沢の側や湿った草地に生える植物で、葉はチダケサシと同じような奇数羽状複葉である。

   数年前に四姑娘山からの下山時、谷川の縁で咲いているオオチダケサシを車の中から目撃した。

   この時は急いでいたこともあり、撮影する時間が取れなかった。

   帰国後、何度も何度も悔やんだので、今回は絶対に、と思っていたのである。




   
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   ところが今回、自生地の臥龍の集落が近づくにつれ、あちこちに崖崩れの跡があり

   住民こぞっての復旧作業中であった。

   ブルーシートで覆われた仮設住宅が並び、水溜りの多いぬかるみの道に、かつての面影は

   何ひとつ残っていなかった。

   何度も通ったことのある道が、はじめて出会う場所のように、地震によって全く様変わりしていたのである。

   オオチダケサシのピンクの花群が、所々に咲いていた。

   だが私は、花の側で車を止めろ、とは指示できなかった。

   無残な惨状を見るにつけ、喉まで出かかった言葉を何度も呑みこんだのである。

   花など眺めていられるような状態ではなかったのである。

   視界をチラッとピンクが掠めるたびにドキドキしていたが

   ついに声を出すことが出来なかった。

   ところが、パンダの保護区がある前の辺りで、車は復旧工事のために停車させられた。

   片側交互通行の上、工事の関係で何分待たされるのか、何時間待たされるのか、全くわからない。

   ストップさせている旗振りの道路関係者でさえ、時間は未定だと言うのである。

   延々と続く長蛇の車列、皆イライラしながら待っている。

   その為、車を降りることが許されない。

   意を決して通訳に理由を話し、私1人だけが車を降りる。ケイタイだけを手にして。

   登山靴でぬかるみをドタドタ走りながら、空気が薄い中ではぁはぁ息を切らしながら

   やっとオオチダケサシの側まで近づく。

   夢中でパチパチと撮ったのが上の3枚の画像である。

   後にも先にもこの3枚が撮影のすべてである。

   クラクションをププーッと鳴らされて、慌てて車まで走り戻る。

   この間、10分もなかっただろう。

   3枚目の画像、花の後方に見える砂利のような岩山は、地震によって山が崩壊し

   森林を破壊した状態である。




   画像画像





















   想像以上の惨状を目の当たりにして、どうにかこうにか成都の町まで戻ってきた。

   その翌日、崖崩れが再び起きて道路が再度寸断された、と聞かされたのは帰国してからだった。

   間一髪の行程に、リーダーの私は日本で脂汗をかく思いがした。

   上の左画像、森林に覆われていた山が地震によって地すべりが発生し、岩山と化していた。

   道路はいたるところで大岩がゴロゴロの状態(右画像)

   今思えば、オオチダケサシが咲いていたのは、あの場所が最後だったようだ。

   ケイタイで撮影した場所以降、ついにオオチダケサシを見ることはなかった。

   閑話休題

   ところでオオチダケサシは、日本と大陸が陸続きであったことの生き証人である。

   現在の分布は長崎県の対馬だけだが、その数は極めて少ない。

   絶滅危惧植物である。

   ちと気になるのは、そのランク付けである。

   レッドデータが見直された以降も絶滅危惧U類(VU)なのである。

   少なくとも私が知る範囲ではENかCRに相当すると思われる。

   次回の見直し時には提言すべき問題かも知れない。







   オオチダケサシ  ユキノシタ科チダケサシ属  

   日本では長崎県対馬に分布

   花期 7〜8月





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   撮影は2009年7月20日  中国四川省臥龍にて。  




   




   

   

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この3枚のオオチダケサシの写真がみかんさんの心情の全てを物語っていますね
思わず涙が出てしまうほどの惨状、緊迫した様子に手に汗握る思いです。よほどの人で無い限り花の撮影に興じること等出来ないと思います。みかんさんは正解です・・・・無事帰れて、良かったですね。
ケイ
2010/07/18 11:13
みかんさん、こんばんは。
みかんさんの優しさが伝わってきます。
惨状の中でもプロ魂と言いながらカメラが向けられる方もいられますが、みかんさんのような気持ちが花を愛する気持ちに繋がり、そんな中での貴重な映像が撮れたのだと思います。
こちらのチダケサシより花房は華やかですね。
主人も報道から身をひいたのは「人の不幸にカメラを向けられない」というのが理由でした。
中国も先日の豪雨の惨劇も早く復興できることをお祈り致します。
アザミの歌
2010/07/18 23:28
ケイさん おはようございます。
中国四川大地震の爪跡は、昨年までは悲惨なものがありました。今年は行く予定がないのですが、かなり復旧したのではないかと思っています。日本で報道されることはないですが、山奥ゆえに都市部と違って復旧にも時間がかかるようです。
みかん
2010/07/20 09:22
アザミの歌さん おはようございます。
報道写真家ならば、カメラを通して厳しい現実を報道しなければならないですから、個人の感情をさしはさむ余地はないのだと思うのですが、幸いにしてみかんは植物写真家なので、こんな気弱な性格でも何とか通用するようです。ありがたや、ありがたや、といったところです。
オオチダケサシは花の色も濃いめのものが多いですね。ただチダケサシほど普通の植物ではないようです。
みかん
2010/07/20 09:34

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