みかんの花日記

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zoom RSS 花紀行2  師走の渥美半島

<<   作成日時 : 2008/12/23 09:14   >>

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                     名も知らぬ 遠き島より

                     流れ寄る 椰子の実ひとつ




                     故郷の岸を離れて

                     汝はそも波に幾月








   島崎藤村の「椰子の実」の詩碑は、渥美半島の先端、伊良湖岬にある。

   この浜に流れ着いた椰子の実を見て、藤村は遠い南国へと思いを馳せた。

   渥美半島は太平洋に向かって長く延びる半島で、遠州灘と三河湾に面している。

   気候が温暖で、花卉の栽培やキャベツやブロッコリーなどの冬野菜の栽培が盛んである。

   先端にある伊良湖岬は、タカの渡りの観察地としても有名である。

   だがこの季節、野草ファンとしては真っ先に思い浮かべる植物がある。

   それは渥美半島だけに自生する絶滅危惧植物

   ハギクソウである。

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   ハギクソウは冬に真っ赤に紅葉する。

   この状態が菊の花のように見えるので、この名前が付いた。

   キク科ではなくトウダイグサ科である。

   花は4〜5月に咲く。

   黄緑色の奇妙な形の花は、他の草の緑に隠れて、咲いていても目立たない。

   ところが、今頃の季節になると、ここにいます、とばかりに鮮やかに紅葉する。

   色づき具合は株や時期によって微妙に異なり

   様々な状態が見られる。

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   花よりも紅葉の見事さで名前が付けられた、というちょっと経歴の面白い植物。

   だが、このハギクソウ、年々その姿が少なくなっている。

   ここ十年ほどの間に確実に減少している。

   絶滅の一途をたどっているかにみえる。

   今年、また一箇所の自生地から姿が消えた。

   
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   海岸の砂地は、植物にとってはかなり苛酷な環境である。

   人為による影響がなくても、台風や高波などの被害は大きい。

   ハギクソウが生える場所は海岸線だが、砂の移動がやや安定してきた砂浜、ハマゴウやハマヒルガオが

   繁茂するような所である。海水浴客や観光客の踏みつけによる被害も多いことだろう。

   また、やや内陸部に生えたものは自然の遷移や帰化植物の侵入で衰退している。

   将来に明るい展望が見えないだけに心配である。

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   伊良湖岬の先端には白亜の灯台が建つ。

   冬でも多くの観光客が散策している。

   師走も半ばをすぎているにもかかわらず、岩場には結構な残花が見られる。

   残花と呼ぶには抵抗があるほどの瑞々しさで咲いている。

   天気さえ良ければ、しっかりと花開くのがアゼトウナの黄花である。

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   整備された遊歩道の岩の隙間から、顔を出して花を咲かせているのはハマアザミ。

   ススキの株の根元や、日当たりの良い岩場では、まだ多くの花やつぼみが残っている。

   ハマアザミもまた、花期の長い植物で、冬になっても日当たりの良い海岸では花が見られる常連である。

   すでに果実がほうけて飛散しているものもあるが、テラテラと光る葉は輝いて、縁のトゲが鋭くとがり

   まるで、触れられることを拒んでいるかに見える。

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   頻繁に船が行き来する伊良湖水道の向こうには、三角形の形に小島が浮かんでいる。

   三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった神島である。

   逆光に光る海を漁船や大型タンカー、貨物船などがひっきりなしに通る。

   伊良湖水道は日本三大潮流のひとつ、いわば海の難所だが、操業している漁船は多い。

   船に掲げられた旗でそれを知ることができる。

   
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   恋路が浜は長い距離に渡って砂浜が続く。

   観光客のそぞろ歩きにはもってこいの砂浜になっているが、そのため踏みつけなどにより海浜植物は多大な

   迷惑をこうむっている。

   かつてこの砂浜に生えていたハギクソウも姿を消してしまった。

   砂浜を歩いてゆくとコマツヨイグサが咲いていた。

   ぽつぽつとだが、いじけたような花を咲かせている。帰化植物の強さを思う。

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   砂浜は海辺の植物達の戦場だ。

   不安定な砂地に長大な根を延ばしてハマゴウやオニシバ、ハマユウなどが戦っている。

   ツルを延ばして、あわよくば定着しようとイワダレソウやエビヅルが様子を窺っている。

   それらが今、渋い色に紅葉している。

   イワダレソウは濃い赤紫色に、ハマゴウはくすんだような赤茶色に

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   そんな中で近くの藪から伸びだしてきたエビヅルだけは、少し派手に紅葉している。

   やや葉が大きいだけに、その葉は一段と目立つ。

   遠くから眺めるとハギクソウかな、と期待をさせられるような赤である。

   だが、近づくとエビヅルでがっかりするが、この葉はそれなりに美しい。

   ガッカリしながらもケイタイのカメラを向けてしまう。

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   渥美半島は長さ45キロもある長大な半島だが、先端部分はまだ良い状態の照葉樹林に覆われている。

   ハゼノキが赤く紅葉している他は、もこもことした常緑の木がこんもりと茂っている。

   師走の今は、モチノキの大粒の赤い果実がよく目立つ。

   海により近い林縁部ではトベラの果実がはぜて、赤い種子が飛び出している。

   ねばねばするこの赤い種子も、冬場の鳥達の貴重な食料となる。

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   トベラの木の下にはツルソバがジャングルのように繁茂していた。

   四国や九州の海岸沿いでは珍しくもないツルソバだが

   渥美半島では先端の伊良湖岬周辺だけに自生している。

   すでに黒く熟した果実も見えているが、まだまだ花盛りである。

   米粒のように見える花だが、ルーペで拡大してみると

   ぽっかりと口をあけたような5弁の花だとわかる。

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   最近渥美半島で急速に勢力を拡大しているのが、下の画像の植物である。

   半島全体にかなり広がっている。

   帰化植物のセンダングサの仲間Bidens属なのだが、なんという名前で呼んだらいいのか

   ちょっと迷っている。シロノセンダングサよりは舌状花の数が少なく、やや小さく、コシロノセンダングサよりは

   はるかに大きい舌状花、返しのついた突き刺さる種子によって、半島を席捲しつつある。

   畑全体が真っ白く見えるような場所もある。

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   帰化植物も多い渥美半島だが、照葉樹林では、照葉樹を代表するヤブツバキが

   赤い花を咲かせはじめた。

   冬の花とも、春の花とも呼べるヤブツバキは、これから数ヶ月にわたって咲き続ける。

   蜜を多く出すために、椿の花が咲くとメジロやヒヨドリの姿をよく見かけるようになる。

   花は鳥達に美味しい蜜をごちそうするのだ。

   鳥たち自身は、その吸蜜行動が受粉に役立っていることを知っているのだろうか。

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   道路脇には観光用に植えられた菜の花畑が随所にあるが、それらはまだ全く咲いていない。

   だが、農家の方が畑で育てている菜の花は

   すでに満開に近い状態になっている所が何箇所もあった。

   温室やビニールハウスの向こうには、青い海がキラキラと光っている。

   菜の花畑には虫達の羽音がわんわんというほどに賑やかに響いている。

   近づくと菜の花の匂いに全身が包まれる。

   そこには、ひと足早い春が確実にやってきていた。

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   撮影は2008.12.20 渥美半島全域で。

   画像はクリックすると大きくなります。

   今回はハギクソウの紅葉を写すのが目的でしたが、思いがけずたくさんの花々が見られたので
   花紀行としてアップします。

   知っていると、ちょっと自慢できるかもの豆知識
   伊良湖岬 いらこみさき と読むのではなく、正しくは いらござき と読みます。
   「椰子の実」の作詞者、島崎藤村はここには来ていません。民俗学者の柳田国男が伊良湖岬の浜辺で
   拾った椰子の実を藤村に見せたのが、この詩のできるきっかけとなりました。

   オマケ画像
   何を血迷ったか、ハマユウの花がたった1本だけ咲いていました。それと、目的だったハギクソウの紅葉を
   もう一度お目にかけます。

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
今日は。
素的なお花、いつも拝見しています。
渥美半島・・・何度か旅したことがありのです。
伊良子岬の先端のホテルで宿泊した時、海岸に降りていくと、
ヤシの実の歌の碑があった記憶を思い出しましたが、
今もその位置にあるかは定かではありません。

ハギクソウ初めて拝見しました。
素的な花ですか?・・・葉っぱのような花ですね。
トベラ・・・と言うのですか?
以前小豆島に行った時沢山あったのですが、名前が分かりませんでした。

>急速に勢力を拡大している・・・花はウインターコスモスに似ていますね。
違うでしょうが。
やろい
2008/12/24 15:12
どーーーーもヽ(´ー`)ノ
ハギクソウは葦毛の主さんの庭で見せてもらいましたけど始めてみると葉には見えないよねーーー。
色がまた良いからどうしても花だと思ってしまう。
何のためにあんなに綺麗になるんだろう。
植物的に何か意味があるんだろうなーーーー
と思う今日この頃
で、変な機能を2つほどクリックしときました。(^▽^*)
アライグマ
2008/12/24 16:55
海岸の風景もステキです。
植物も砂も海も(山も川も?)みんないっしょになって,自然なのだー,と,感じます。
どこかをふらつきたくなるような,誘われる景色をありがとうございます。
はるこ
2008/12/24 22:42
やろいさん ようこそお越しくださいました。
コメントありがとうございます。ここで紹介したハギクソウは花ではありません。葉が紅葉すると花のように見えるのですよ。トベラは海岸ではごく普通に見られますね。
ウインターコスモスも学名で呼ぶとBidens属なんですよ。同じ仲間ですから似たような花を咲かせますね。
普段よくこのブログを見てくれている方でも、書き込みをしてくれないと当方には全くわかりません。やろいさんの初コメントとても嬉しかったです。どうぞこれからも遊びに来てくださいね。
みかん
2008/12/25 10:16
アライグマさん おはようございます。
ヒゴスミレきれいに咲きましたね。冬なのにあれだけキレイな形に開くのは園芸種だからかも知れません。
葦毛の主さんの所では増えていますね。自然界でもあの勢いで増えてくれれば安心なのですが・・・・。
つい最近、このブログに新機能の気持玉というのが勝手に付くようになりました。コメントを書くのは面倒だけど、クリックするだけで気持ちが通じるならということなのでしょうね。コメント書くのが面倒だと思っているあなた、せめてクリックだけでも足跡残してくれませんか。
みかん
2008/12/25 10:28
はるこさん おはようございます。
山の緑が海の魚を育てるように、自然は、すべてが一体化してはじめて自然なのだと思います。
私の昔を知る古い友人は「お前はなんでつまらない花の写真なんか撮ってるのだ、もっと風景を撮ればいいのに」と言います。かつては旅行雑誌や新聞などに風景主体の写真を発表していたので、そんなふうに思えるのでしょうね。
花紀行は、思わずふらっと出掛けたくなるような、あるいは、旅を一緒にしたような、そんな気持ちになってもらえるのが狙いです。
みかん
2008/12/25 10:46
 ハギクソウ、一度見てみたい植物です。
 アゼトウナはこちらに分布しませんし、ハマアザミは稀産種です。ツルソバはボウボウと生い茂る場所がありますが。最近、ヤブツバキの純白も偶然見つけました。
 海岸性の稀産種が足の踏み場も無いほどある場所がありますが、そこは土地の境界管理のために笹刈りがされている場所です。ハギクソウもやはり開けて、ところどころ地面がのぞいているような場所が要るのではないでしょうか。
 人間を含めての自然なのだと思います。
 この間、今年最後に訪れたときはコケリンドウのロゼットや、大きな蕾を付けたケナシヒメハギもたくさんあって春が楽しみです。
コージ
2008/12/25 20:54
コージさん 今晩は。
ハギクソウは里山の植物とは違い、人間とは共存していないようです。自然度の高い砂浜が本来の生育地です。人間の行為によって、むしろ自生地を狭められているのかも知れません。自然の砂浜は日本から随分と姿を消しています。
コケリンドウは海岸の水辺で見かけることが多いですね。来春、すぐに咲くわけですから、もうかなりしっかりしたロゼットだったのではないですか。この
ロゼットだけでコケリンドウだとわかる人は、極めて少ないと思いますが。どうぞまた遊びに来てください。
みかん
2008/12/26 00:02
 ご無沙汰しております。隣の石垣沖からは椰子の実流しが毎年の恒例行事となっているようです。こちらではリュウキュウコスミレなどが咲き始めています。
 クリックだけならと思いながらも足跡です・・・
うらの
2008/12/26 23:54
うらのさん 今晩は。
こちらこそご無沙汰しています。以心伝心でしょうか、うらのさんにメールを出そうとしていたところです。1月になったら西表島に行くつもりです。今回はシダの撮影を真面目にしようかと考えています。暇な時間を見つけてお付き合いください。日程的なことはまだ決めていません。後でメールしますね。
石垣島から椰子の実を流す、そんな行事があったのですか、知りませんでした。渥美半島には随分色々な南の島の実が、今でも流れ着くようです。
みかん
2008/12/27 00:08
みかんさん、こんばんは。
今年も残り少なくなりました。又、悲しい事続きで・・・。
でも、娘の為に頑張らなくては・・。
ハギクソウはきれいな紅葉になるのですね。一度は会いたく思います。

かげろう
2008/12/27 00:47
かげろうさん おはようございます。
年末になって暗いニュースばかりで気が重いです。明るい明日を信じてガンバルしかないですね。今日明日は大掃除、こちらも頑張らなければ。
みかん
2008/12/27 10:19
みかんさん、おはようございます。
今年1年お付き合い頂き、有難うございました。
来る年が明るい年でありますように・・・。
来年もお付き合いの程、よろしくお願い致します。
良いお年をお迎えください。
かげろう
2008/12/30 10:34
かげろうさん こんにちは。
こちらこそ色々とありがとうございました。かげろうさんの書き込みが楽しみな1年でもありました。来年もどうぞよろしく。良い新年をお迎えください。
みかん
2008/12/31 11:05

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